
女子サッカーの古豪「岡山湯郷Belle」の復活と、そのホームタウンである湯郷温泉を始めとした地域の活性化に向けて、現在、岡山県美作市にて常駐して支援を行っている地域人財基盤(以下、「当社」という)のプロフェッショナルメンバーをご紹介します。
■ 石川 励プロフィール
一般社団法人地域人財基盤 ディレクター
1973年 大阪生まれ。
スポーツ事業を中心とした、新規事業の開発が専門。戦略PRの発想軸から、生活者及び地域で働く方々の態度変容を促し、地域に新しい活動を生み出し、地域活性化を図る。
▼ 略歴
「一般社団法人地域人財基盤」ディレクター
地域事業会社の課題に伴走し、地域人財支援、地域事業支援、地域ブランド開発に取り組む。
「株式会社アイナックコーポレーション(INAC神戸レオネッサ)」事業統括本部長
プロ女子サッカークラブの事業運営を統括。経営戦略・スポンサーセールス・集客・ファン獲得・物販・ホームタウン・メディア露出の活動に従事し、大幅な経営改善を実現。
「株式会社サニーサイドアップ」プロデューサー
食品・スポーツ・自治体のPR及びブランディング活動に従事。アスリートマーケティングや新規事業の責任者として、サッカー国際親善試合の興行、日本初のリテールメディアを開発し、全国の流通と、食品メーカーのクロスMD支援実現に従事。
岡山湯郷Belleとは
岡山湯郷Belleは、美作町(2001年当時。現在は美作市に統合)のスポーツの核をめざして県と町の官民一体となった地域支援、振興を狙いとした女子サッカーチームによる町おこしプロジェクトにより、湯郷温泉の従業員や市民が中心となって2001年に結成し、「なでしこリーグ」に参加、2014年「プレナスなでしこリーグ2014 レギュラーシリーズ」を優勝するなど、名門チームと呼ばれていました。小さな温泉街の近くにあるスタジアム「岡山県美作ラグビー・サッカー場」に超満員の4,958人を集めるなど、当時の女子日本代表を牽引する選手が複数在籍していたこともあり、女子サッカーの中心に存在するクラブでした。しかしながら、代表選手や当時のコーチングスタッフがクラブを離れていき、成績も徐々に下降し、2021年シーズンは、なでしこリーグ2部で8チーム中最下位に終わるなど、近年は苦労を強いられています。

あの熱気をもう一度
以前、私がINAC神戸レオネッサの事業統括をしていた時に、岡山湯郷Belleとの試合で美作を訪れたことがありました。ちょうど女子サッカー日本代表が「FIFA女子ワールドカップ カナダ2015」で準優勝し、直後のリーグ再開の試合が、凱旋試合として開催され、また両チームになでしこジャパンの代表選手が9名所属するチームが対戦として、お客さんが超満員でした。収容人数5,000名に対し4,958名。地域のお年寄りから子供まで、お客さんがいっぱいで、とにかく圧倒された記憶があります。このプロジェクトのお話を頂いた際、その衝撃的な記憶に残っている岡山湯郷Belleであれば、絶対にもう一度あの熱気を取り戻すことができると思いました。地域から愛され、地域の方々が熱狂的に盛り上がった成功体験を持っていることは非常に重要なことだと思います。幸い当時のインパクトが強烈で、未だに地域の人々の気持ちが燻ぶっているのを感じます。チームを再生させれば、必ず地域は盛り上がると確信しています。
ほぼ0からのチームづくり。そして、開幕直前の監督退任へ
私が湯郷入りしたのは今年の1月。当時、これまでいたスタッフは、ほぼ居なくなっていました。当然、2月になっても一向にチームづくりが進まず、焦りも感じていました。一方で、第三者委員会からの指摘を受けていたため、先ずは、チームの方向性や経営における意思決定の場としての経営会議を設置・運営するなど、ガバナンスの立て直しを図りました。更に、コンプライアンス上の課題もひとつひとつ抽出し、それを潰していくための施策を検討し、公共性の高い企業として、最低限求められる基盤の整備を行いました。
チーム体制強化に向けては、INAC神戸の強化部長・GMをやっていた高橋さんをスカウトし、承諾を取り付けたものの、2月の段階ではチームの現場で動ける人間はまだ2名でした。3月に入り、待望のGM高橋さんと、コーチ榊原さんが加入することになりました。ようやくチーム体制が整いつつあると思った矢先、突然、監督が退任することになり、開幕まで残りわずかしかない中、コーチだった榊原さんに急遽監督を依頼することになりました。青天の霹靂でした。

なんとか間に合った開幕戦の運営体制
開幕戦を翌月に控え、リーグに参加する申請や、スタジアムの予約、アウェイ戦のホテル予約など日程調整も出来ていないことが判明しました。一番驚いたことは、ユニフォームが出来ていなかったことです。慌てて制作し、完成したユニフォームは届いたのはなんと試合の2日前でした(笑)年末にはフロントスタッフもいなくなっていたため、スポンサー企業へのご挨拶や新シーズンに向けた提案も行われておらず、改めてすべての企業を訪問し、お詫びと支援依頼をギリギリのスケジュールで行いました。
一方で、フロント機能が脆弱だった為、ホームゲームの運営準備も綱渡り状態でした。運営担当は2月に獲得できたものの、広報担当やチケット担当、商品化担当も不在。開幕ホームゲームは、広報担当に、元湯郷Belleのスタッフを、チケット担当には、当社メンバーがサポートとして加わり、何とか開催することができました。また、ボランティアや美作市役所、美作市議会、湯郷温泉、岡山湯郷Belleのサポーターやスポンサーの皆さまにご協力を頂きました。ホームゲーム告知に向けたノボリ、ポスターなどの配布でも、サポーターほか、地域の皆さまに助けられました。この場を借りて、御礼申し上げます。
地域を笑顔で元気に!岡山湯郷Belleを中心に持続的で循環できる仕組みづくり
私のメインの業務は、地域連携を図りつつ、集客やファンづくりとともに、スポンサー獲得や商品化事業をリードする事です。ただ、単にチケットやスポンサーを売るだけではなく、スタジアムで地元の特産品を販売したり、湯郷Belleを活用した観戦ツーリズムの促進、地元のお祭やイベントへの参加、そして、女性選手ならではのセンスを活かしたグッズ商品づくりなどなど、地域と連携したり、多様な価値を取り込む中で、地域活性化を意識した事業を進めています。岡山湯郷Belleを媒介に、スポンサー、地域、クラブが三方良しになれたら良いと思っています。
全国的に、サッカー、バスケ、卓球、ソフトボールなど、女子スポーツも盛り上がりを見せています。ただ全て成功しているとは言えない状況です。長期的には、ショービジネスという視点だけでなく、岡山湯郷Belleは、地域の人が笑顔になったり、元気の源になったり欠かせない社会インフラのような存在を目指しています。引退した選手も地域に住み続け、仕事して、結婚し子供ができて、家族と一緒にスタジアムにくる。そんな地域密着型のクラブになれるようチャレンジしていきたいと思っています。
もともと岡山湯郷Belleは、地域の方々から深く愛されていたチームであり、当社としては、今回の支援を通じて、湯郷温泉ほか周辺地域の活性化を図り、集客、施設運営、人材支援、資金調達支援だけでなく、古民家再生、移住定住支援、産業誘致など様々な分野への支援を拡大させつつ、美作市の持続可能なまちづくりを目指して支援して行きたいと考えています。